20年12月16日、全日本教職員組合・教組共闘連絡会・障害児学校の設置基準策定を求め、豊かな障害児教育の実現をめざす会は、「特別支援学校の過大・過密解消につなる設置基準の策定を~私たちがもとめる設置基準策定に向けての『提言』」を記者発表しました。
特別支援学校の設置基準への提案部分は以下の通りです。
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<私たちが求める設置基準>
私たちは、過大・過密の解消につながる設置基準にするために、設置基準にこういう内容を盛り込んでほしいという意見を集めてきました。全国各地からたくさんの意見が寄せられています。
それらの意見も踏まえて、現在の特別支援学校の過大・過密状態を改善するため、私たちは以下のことを設置基準に盛り込むことを求めます。
① 設置基準策定の目的
策定される設置基準が小中学校の設置基準と同じような内容では、特別支援学校の人権侵害ともいえる深刻な課題が解決されません。「有識者会議」や中教審の文書にもあるように、設置基準策定の目的は「特別支援学校の教育環境を改善する」ことです。特別支援学校の設置基準は、「あればいい」というものではなく、教育環境の改善につながるものでなくてはなりません。設置基準の冒頭にその目的を明記することが必要です。
② 児童生徒数の上限
特別支援学校の過大化、過密化を解消するためには、児童生徒数や学級数の上限を規定することが必要です。私たちは、小学部・中学部・高等部のある知的障害校を想定して、児童生徒数150人が上限と考えます。寄せられた意見にも「150 人が『学校に在籍している子ども』として把握できる限度である」という声が多くありました。自治体の中にも、「集団活動に適した規模」として「100~130 人の在籍が適当」、「(適正規模は)小中学部90人、高等部60人で150人」としている所があります。
知的障害以外の学校はもっと少ない方が適切という意見が多くありました。地域によっては規模が小さい特別支援学校もあり、高等部単独校などもあります。在籍数の下限は設定せず、学校の特性や地域の実態に応じて少人数の学校も可能とすべきです。
適正とする人数が比較的多い自治体でも「効果的な指導や学校運営」のために「150~200 人程度の規模」が妥当としています。200 人以上の学校を早急に解消し、その後150人以下にしていくなど計画的な整備を求めます。
③ 1 学級に必要な教員数
最低でも複数担任が必要です。1 対 1 対応が必要な子どもが在籍する学級では、6 人の子どもを 2 人で担当するのも困難であり、重複障害学級・訪問学級も含めて、状況に合わせた教員配置が必要です。安全に活動できる人数として、教員と子どもの比は1:2とする意見もあります。担任外の十分な配置も必要です。強度行動障害など障害が重い児童生徒は重複障害学級と同様に 3 人1学級で編制できるようにすること、とりわけ教員が不足している小中学部の定数改善も含めて制度を改め、教職員不足を解消する施策を求めます。
④ 必要な施設設備、特別教室
小中学校の設置基準には「教室(普通教室、特別教室)、図書室、保健室、職員室」とありますが、特別支援学校の最低限必要な施設設備はこれだけではありません。自立活動室や作業室をはじめとした、特別支援学校の教育課程に合わせた施設が必要です。また、以前の高等学校設置基準には、学科ごとに必要な施設設備が記載されていました。それと同様に、障害種ごとに必要な施設設備を記載すべきです。
音楽室、家庭科室等、設置すべき特別教室を示すことも必要です。小中学校は「義務教育諸学校の施設費の国庫負担に関する法律施行令」に設置すべき特別教室が明記されています。特別支援学校にも同様の特別教室がもちろん必要であり、同施行令に特別支援学校の項を設けるなどして、学部ごとに設置すべき特別教室を示すべきです。
⑤ 通学時間の上限
幼稚園の設置基準には「通園の際安全な環境にこれを定めなければならない」とあります。特別支援学校も同様です。障害のある子どもたちが1 時間以上もバスに乗って登校する状況は安全とは言えません。小中学校は「適正規模・適正配置に関する手引き」で、通学時間の目安は1 時間以内とされています。特別支援学校では、通学時間は子どもたちの命にもかかわることであり、設置基準に通学時間の上限規定が必要です。
⑥ 校舎等の面積の規定
特別支援学校の国庫補助基準面積は、「公立学校施設費国庫負担金等に関する関係法令等の運用細目」において学部種(小・中学部、幼稚部、高等部)、建物種(校舎、屋内運動場、寄宿舎)、障害種(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱)ごとに規定されています。国庫補助基準面積とは、「学校教育の実施を確保する上で必要となる標準的な面積」とされています。
公立学校施設実態調査(2019.5.1 現在)によると、特別支援学校全体では、この基準面積」に対して実際に保有している面積の割合が、校舎が約67%、屋内運動場が約69%です。この「基準面積」の規定を設置基準に盛り込み、保有する面積の割合を 100%以上にする必要があります。また、屋外運動場の面積規定も必要です。
⑦ 既存の学校にも適用する規定
他校種の設置基準の附則には、既存校について「当分の間、なお従前の例によることができる」とあります。特別支援学校の設置基準に同様の附則を設けるべきではありません。特別支援学校は現存する学校の環境が劣悪であり、「当分の間」放置することは許されません。一斉に基準に合わせることは無理でも、期限を示して計画的に改善するべきです。
<関連する提案>
設置基準の策定だけで、現在の特別支援学校の課題がすべて解決されるわけではありません。とりわけ、分校・分教室の劣悪な環境が、設置基準の策定で解決できるのかを危惧しています。
特別支援学校には、教室不足対策として、小中学校や高校の空き校舎・空き教室を利用して設置された分校・分教室が多数あります。そうした所では「職員室と保健室が同じ部屋」「校庭や体育館がない」「『間借り』している学校が使わない時しか特別教室が使えない」「多目的トイレを女子更衣室として利用」など、極めて劣悪な環境になっている所が多いです。分校・分教室の改善につながる規定も必要です。なお、分教室は病院内などに限定し、それ以外の場合は分校として整備すべきと考えます。
「有識者会議」の文書には「特別支援学校の新設や増設を行ったり、他の学校の余裕教室を特別支援学校の教室として確保したりする等の集中的な施設設備の取組を進めることが求められる」とありますが、余裕教室の利用はあくまでも緊急対策です。増設についても、過大な学校がますます大きくなることにつながりかねません。
抜本的な解決のためには、学校の新設を進めることが必要であり、自治体が学校の新設に踏み出すための予算の増額を求めます。
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昨日、山口県障がい児の教育を進める会の県教委交渉が行われ参加しました。
この中で、県内の特別支援学校の在籍児童が160人以上の学校が、田布施、徳山、山口、宇部、下関の5校であることが分かりました。
特に宇部は321人、下関は266人です。
また、運行時間が70分以上のコースがある学校が、岩国、田布施、宇部、下関、萩の5校であることが分かりました。
特に、宇部は4コース、田布施は2コース、萩が2コースが70分以上です。
美祢、長門の分教室の分校化と、マンモス化と長時間通学が慢性化している宇部総合支援学校の二つの学校にすることが急がれていると感じました。
今後の議会で、この点について質していきたいと思います。
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