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幣原喜重郎が軍備全廃と戦争放棄を主張する

 日本共産党の志位和夫委員長は1月4日に行った「党旗びらき」の挨拶で、岸田自公政権の外交問題について次のように訴えました。
 「米中の覇権争いがさまざまな分野で強まるもと、日本の進路が問われています。中国による東シナ海や南シナ海での覇権主義の行動に対しては、国連憲章と国際法にもとづいた冷静な外交的批判が何よりも大切であります。米バイデン政権は、中国に対して、軍事同盟の全面的強化で対応しようとしており、岸田政権は、米国に追随して、敵基地攻撃能力の保有など大軍拡、憲法9条改定など、海外派兵体制の強化をはかろうとしています。軍事対軍事の悪循環とエスカレーションは、偶発的な衝突や戦争という破局的事態を招きかねない、危険きわまりない道であります。日本共産党は、東アジアと日本を危険にさらすこうした道に厳しく反対するものであります。とくに、岸田政権による9条改憲の企てを断固阻止するために、5月3日の憲法記念日にむけて、9条改憲阻止の署名を、全国津々浦々から1000万の規模で集めることを、年頭にあたって、心から呼び掛けたいと思います。」
 書棚から笠原十九司著「憲法9条と幣原喜重郎 日本国憲法の原点の解明」を取出し、再読しています。
 笠原さんは、この本の「はじめに」に本書の意義について次のように書いています。
 「本書は、憲法作成当時の日本の内外の権力状況、政治状況に規定された『特殊な状況と事情』を解明することによって、幣原喜重郎が憲法9条を発案したのが、歴史的事実であることを証明する。本書が憲法9条発案者をめぐる論争に終止符を打つ契機となることを願っているが、筆者の一番の願いは、憲法9条はマッカーサーによって『押しつけられた』のではなく、日本の首相の幣原の発案によるものであり、その背景に日本の無謀で悲惨な戦争を体験させられた日本国民の総意があったことに多くの国民が確信をもって、歴代自民党政権ならびに保守左翼勢力による9条改憲の策動を阻止して欲しいことである。」
 本書、2章「幣原喜重郎の戦時生活と敗戦」に「憲法9条の原点となった8月15日の体験」という項があります。
 この項に幣原喜重郎著「外交50年」から次の部分が引用されています。
 幣原は、8月15日の玉音放送の直後に乗車した電車の中で、30代ぐらいの元気のいい男が大きなな声で次のように叫んだと述べています。
 「一体君は、こうまで、日本が追いつめられたのを知っていたのか。なぜ戦争をしなければならなかったのか。おれは政府の発表したものを熱心に読んだが、なぜこんな大きな戦争をしなければならなかったのか、ちっとも判らない。戦争は勝った勝ったで、敵をひどく叩きつけたとばかり思っていると、何だ、無条件降伏じゃないか。足も腰も立たぬほど負けたんじゃないか。おれたちは知らん間に戦争に引入れられて、知らん間に降参する。怪しからんのはわれわれを騙し討ちにした当局の連中だ」
 幣原はこの本に中で、この男性の訴えを聞いて「われわれの子孫をして、再びこのような、自らの意志でもない戦争の悲参事を味わさしぬよう、政治の組立を改めなければならぬということを、私はその時深く感じたのであった。」と語っています。
 幣原は、戦後総理の職についたときに、電車の光景が浮かだと次のように述べています。
 「あの野に叫ぶ国民の意思を実現すべく努めなくてはいかんと、堅く決心したのであった。それで、憲法の中に、未来永劫そのような戦争をしないようにし、政治のやり方を変えることにした。つまり戦争を放棄し、軍備を全廃して、どこまでも民主主義に徹しなければならないということは、他の人は知らないが、私だけに関する限り、前に述べた信念からであった。それは一種の魔力とでもいうか、見えざる力が私の頭を支配したのであった。よくアメリカの人が日本にやって来て、こんどの新憲法というものは、日本人の意志に反して、総司令部の方から迫られたんじゃありませんかと聞かれるのだが、それは私の関する限りそうではない、決して誰からも強いられたものではないのである。軍備に関しては、日本の立場からいえば、少しばかりの軍隊を持つことはほとんど意味がないのである。将校の任に当たってみればいくらかでもその任務の効果的なものにしたいと考えるは、それは当然のことであろう。外国と戦争をすれば必ず負けるに決まっているような劣弱な軍隊ならば、誰だって真面目に軍人となって身命を賭すような気にはならない。それでだんだんと深入りして、立派な軍隊を拵えようとする。戦争の主な原因はそこにある。中途半端な、役にも立たない軍備を持つよりも、むしろ積極的に軍備を全廃し、戦争を放棄してしまうのが、一番確実な方法だと思うのである。」
 1月16日のしんぶん赤旗日曜版で小池書記局長と作家の中島京子さんの対談が掲載されています。
 対談の中で小池書記局長は、「敵基地攻撃能力」について次のように述べています。
 「相手の基地をしらみつぶしに破壊して、制空権を確保してさらに攻撃する、これは『全面戦争』です。こんなことを憲法9条がある日本でやれるはずがない。」
 「敵基地攻撃能力」の検討を表明した岸田首相は、幣原喜重郎が憲法9条を草案した思いを綴った上記の文章をどう受け止めるのでしょうか。
 幣原喜重郎の「中途半端な、役にも立たないような軍備を持つよりも、むしろ積極的に軍備を全廃し、戦争を放棄してしまうのが、一番確実な方法だと思う」との言葉を私を含めて国民みんなで噛みしめる新年にしたいと思います。
 私は、9条改憲NO!全国市民アクションうべの事務局長として、幣原喜重郎の言葉を知り、9条改憲NO!全国市民アクションが呼びかけている「憲法改悪を許さない全国署名」を大いに広げる新年にしたいと決意を新たにしました。
 「憲法改悪を許さない全国署名」にご協力いただける方は、藤本にお知らせ下さい。

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