議員日誌

「イージス・アショア配備を考える山口の科学者」が記者会見

 14日(金)に、「イージス・アショア配備を考える山口の科学者」が記者会見で「むつみ演習場へのイージス・アショア基地建設計画の問題点」を明らかにされました。

 資料などを除く内容を紹介します。

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むつみ演習場へのイージス・アショア基地建設計画の問題点

2020 年2 月14 日(金) 10 時~
山口県庁 県政記者クラブにて
イージス・アショア配備を考える山口の科学者
共同代表 君波和雄
外山英昭
増山博行

 むつみ演習場にイージス・アショアの設置を行うという昨年5 月、および12 月の防衛省の説明書に対して、私どもは深い関心を抱き、批判的検討を行ってまいりました。その結果、文書としてまとまってきたので、その内容をマスコミ各社に発表します。
 この文書を萩市に送付して、萩市設置の有識者会議において、防衛省資料と併せて検討することを萩市長に申し入れます。提起されている疑問・質問に対して萩市有識者会議が明快な解明を行わない限り、住民の不安を解消することは出来ないと考えます。防衛省の調査報告書(2019 年5 月)と再調査を踏まえた再報告書(2019 年12 月)で、とりわけ問題となる項目
● 地下水に関して
1) 地下水流路図の差し替え
2) 根拠のない地下構造図
● レーダー電波に関して
1) サイドローブの影響はない? ・・・・・・ 電波強度は時間平均、それとも瞬時値?
2) メインビームは地上には影響がない? ・・・・・・ ビームの幅は? 遮蔽物による回折は?
3) 仰角は5~10°? ・・・・・・ 周辺への影響? どこまで見通せる?

Ⅰ.地質と地下水の問題点
 防衛省への何回かの申し入れで、地下水解析ソフトGETFLOWS の解析結果(図1と図2;5月の報告書の34, 36 頁)に間違いがあることを指摘してきた。具体的には、東台の下の地下水の流れが逆向きであることや地下水の流域境界線(図2)の位置がおかしいといった点である。
 それに対して防衛省はまともに回答できなかった。このことは、GETFLOWS の解析結果に問題があり、その解析結果の信頼性が低いことを意味する。
 この議論の過程で、防衛省側には南北と東西の地質断面図を提出するように要求しておいた。
 今回(12 月)の再調査報告書では、これまで間違いであると指摘してきたところをすべて削除した図3(再調査報告書・別冊の49 頁)を出してきた。不都合なところを削除した図であり、隠蔽工作と言われても仕方あるまい。
 さらに、再調査報告書では、1 枚の北西-南東地質断面図を提出してきた(図4:再調査報告書・別冊の50 頁)。この図では西台からむつみ演習場北西部の地下において、基盤(白亜紀火山岩類=報告書の流紋岩質凝灰岩)とその上位の第四紀デイサイト(報告書の阿武火山岩の安山岩)の境界が水平に描かれている。水平に描いたのは、この境界の形状がどの様になっているのか分からなかったためと思われる。防衛省は、演習場で浸透した降雨は、東側の羽月方面に流れると主張しているが、それをこの断面図から読み取ることはできない。
 また、5 月の報告書では地下水の流域境界(線)が示された(図2)。防衛省側は、地下水が基盤とデイサイトとの境界を流れていると推定している。湧水の空間的な分布から、地下水はデイサイトの下底のクリンカー中を流れていると考えられる。基盤とデイサイトの境界に沿って地下水が流れているとすると、地下水の流域境界線は、基盤の尾根と一致するはずである。しかし、図4中に示したように、地下水の流域境界線を横断して描かれた地質断面中には該当する位置に基盤の尾根は描かれておらず、図2中の地下水流域境界線と図4の地質断面図とは矛盾している。
 演習場内で浸透した降雨の一部が西台西方の宇生賀や東台北方の森見藤に湧出する可能性は充分にある。

Ⅱ.レーダー電波の電子機器への影響
 5 月の報告書のp.14 において、図5のようにペースメーカーへの影響はないと言っている。

 p.15 において、その根拠は演習場の外では基準値を越えない(図6)からであるとしている。この計算で使った電力束密度の計算はp.12 の計算式であり、代入した最大電力P は時間平均値である。
 しかし、時間平均の電力でなく、大きなパルス電磁波で電子機器が壊れることは、落雷や、電磁パルス(EMP)兵器の脅威で知られている。日常生活でも、電子レンジの中でアルミ箔に火花放電がおこり焦げるという経験はよくある。
なお、防衛装備庁の技術研究シンポジウム2015の発表要旨
https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2015/image/pdf/P19.pdf
によると、高出力マイクロ波(EPM)を照射して電子機器を壊す指標である電界強度はアンテナからの侵入では2kV/m、隙間等からの侵入で5kV/m と記している。これはミサイルなどの兵器の破壊を想定している。ペースメーカーでは120mW の出力のケイタイが近くにあっても誤動作しないようにISO 規格を定めている。後述のようにイージス・アショアのパルス出力は巨大である。
 ところが、12 月の報告書の別冊p.22 では、電波の強さ(瞬時値)を考えても問題がない、というように記述に変わった(図7)。

 しかしながら、12 月の説明文書での式や数値は5 月のものと変わらず、電力束密度としてp.29 にレーダーからの離れた地点での計算値は、5 月のままである。
 憶測するに、電子機器(ペースメーカーその他)の影響については電波の強さは時間平均値ではなく、瞬時値を使うように指摘があったのであろう。が、そうすると、試験値以下になる距離は5 月の報告書からは数倍に拡大するので、「遮蔽物による減衰や電波吸収体の設置による対策を踏まえて試験値以下であれば影響はない」という表現をとっていると見受けられる。
 この議論は、時間平均値ではなく、瞬時値を使った結果を示した上で、次に「減衰」や「対策」の効果を定量的に示さない限り、到底受け入れることは出来ない。
 12月の再報告書には誤りがあると指摘されても仕方がない。防衛省は瞬時値を秘匿するつもりかもしれない。それでは住民の不安は解消しない。
 瞬時値は時間平均値の数十倍というのが、Wikipedia に記載されている米海軍のイージス艦のレーダーである

 (http://ja.wikipedia.org/wiki/AN/SPY-1)。イージスシステムとしては同じ設計思想によるものが導入されるのだから、イージス・アショアでも同程度と推察できる。

仮に50 倍すると、「試験値」をクリアする距離は√50≒7 倍ほど伸び、ペースメーカーや補聴器の試験値以下となる距離はそれぞれ820m、3319m となる。その事実を明記した上で、遮蔽物や電波吸収体の設置でどうなるかを定量的に議論すべきである。
 さらに、遮蔽物(樹木や表土)や電波吸収体の端に当たった電波からは、ホイヘンスの原理に従って回折し、新たに2 次的なサイドローブともいうべき電波が出ることを無視出来ない。こういうことは実際に電波を出して、どれだけの「漏洩」があるかを実測しなければ分からない。そういう測定を中SAMではやっていなかった。すなわち、中SAMを使った測定で手法は確認されたというのは誤りと言わざるをえない。
 次に、時間平均値ではなく、瞬時値をつかうと、遮蔽物による減衰や電波吸収体の設置による対策などは関係がなくなる、航空機等に照射されるメインビームの評価が大きく変わる。
 5月の報告書のp.25 を図8に示す。
 レーダーの位置を標高530 m とし、メインビームの仰角を10 度で照射すると、航空路の真下である7,503m 先ではビームは標高1,853 m となる。このポイントはレーダーからは7,619 m 離れているので、最大電力の時間平均値で計算すると、S = 1.12 mW/cm2 言い換えるとE = 65 V/m となるので、旅客機の電磁耐性の基準100 V/m 以下であるということである。
 しかし、旅客機の運行に問題となるのは電子機器類であり、電力の時間平均値ではなく、瞬時値で考えるべきではなかろうか。この点は米国航空無線技術委員会(RTCA)の定める規格では、どういう電波に対して、100 V/m なのかを詳細を示す義務が防衛省にある。
 定期航空便については航空路Y14 の高度12,000 フィートを遵守しており、かつメインビームの仰角が10 度以下であれば、基準値をクリアするだろう。が、この航空路の下を飛行する小型機やヘリコプターはメインビームをもろに浴びる可能性がある。仮にレーダー出力電力の瞬時値が時間平均値の50 倍なら、保つべき距離は7.07 倍となる。
 もし、ドクターヘリや防災ヘリがペースメーカーを装着した人を搬送しているならば、ペースメーカーの基準値S = 3.191mW/cm2言い換えるとE = 121V/m 以下が必要となり、ヘリコプターの基準より厳しくなる。
 防衛省の12 月の説明書ではp.14 のように、「今後、関係機関との調整・協議を進めてまいります」ということで、国土交通省との協議で飛行禁止区域が大幅に拡大されて、地域住民・性格・経済に大きな影響が生ずることに含みを持たせている。無責任のそしりは免れないであろう。
 なお、4 頁の最後に記したEPM で電子機器を壊すという2kV/m をイージス・アショアの瞬時値で評価すると、アンテナから1,750mになる。この範囲でメインビームを浴びると航空機、ドローンも墜落するであろう。西台、東台一帯は飛行禁止区域となることは必至である。

メインビームの幅と仰角に関わる問題
 防衛省の説明資料では、メインビームの図においてはビームが末広がりに拡がっていく様が描かれている。それを引用して我々の書類では図9のように整理している。
 防衛省資料では通常は仰角5°~10°を探査し、山などの遮蔽物にあてないという。しかし、メインビームの拡がり角度を示していないので、安全性の評価は出来ない。それどころか、イージス艦のSPY-1 のレーダーでは幅は1.7°と言われている。仰角9°以上にしないと安心できないが、そうするとレーダーの死角が広すぎて、レーダー適地とは言えない。(「諸問題」の小冊子の付録7)
 なお、西台の上の野菜畑と東台の牧場への影響を全く記述していない(影響が大きすぎて書けなかった?)。実際、国土地理院電子地図で断面図を描くと、畑の南端の仰角は4°。樹木が25m としてその仰角は7.8°。この畑の労働者を防衛省は黙殺していることになる。

補足
 前ページの国土地理院電子地図に対応するグーグルアースの図は右の通り。
 少し西に振ると、断面図は下図のようになって、樹木以外は遮蔽物がなく、レーダー位置(標高530m)からは、たとえ仰角が高くてメインビームの裾野がかからなくても、1 次のサイドローブがあたるので、「スマート農法」には重大な障害となり得る。

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 資料等がなく分かりにくい内容となりました。

 詳しいデータ等が必要な場合は、私に連絡ください。先生方に確認をしてお渡ししたいと思います。

 私が、これまでブログで不十分ながら指摘をしてきたいくつかの問題をこの文書で科学的に指摘されています。

 また、新しい指摘も数多くあります。

  いずれにしても、地元の先生方のイージス・アショア配備の問題点の指摘は極めて重要な内容です。

 防衛省はじめ関係機関は、この内容を十分に精査し、県民に説明すべきです。

  しっかりこの文書を読み解いて、2月県議会の論戦に生かしていきたいと思います。

 イージス・アショアの問題について、引き続き、皆さんのご意見をお聞かせください。

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