集英社新書「『改憲』の論点」を読んでいます。
この本は、「立憲デモクラシーの会」の研究者が、九条改憲の本質を明らかにしたものです。
第一章「『自衛隊明記改憲の問題」と題して首都大学東京教授の木村草太さんが執筆しています。
木村さんは、「日本国憲法の許容する武力行使と国際法の関係」について、「国際法に基づき『日本国』は集団的自衛権を持っています。しかし、日本国憲法は、『日本政府』がこれを行使することを禁じているのです。日本国憲法とは、日本国の主権者である国民の意思です。政府は、主権者の意思である憲法に違反するような権限行使はできません。『国際法上、日本国は集団的自衛権を持っているけれど、日本国憲法により、日本政府は集団的自衛権を行使できない』ということです。」と明確に述べています。
その上で、木村さんは、2015年、自衛隊法76条が改正され、「存立危機事態条項」が明記されたことの問題を次のように指摘しています。
「存立危機事態とは、日本と外国とが同時に攻撃を受けている場面ぐらいしか考えられません。この場合には、従来通り、日本への武力攻撃事態(自衛隊法76条1項1号)を認定して、国際法上は個別的自衛権で正当化すればいいのです。しかしながら、政府は、ホルムズ海峡の封鎖など、日本への武力攻撃がない場合にもでこの条文を適用できると説明しました。この厳格な文言にも関わらず、『ホルムズ海峡にまで行ける』と言う強弁を認めるのでは、条文が何を意味しているかが全く不明になってしまいます。『時の政府ができると言ったら、なんでも武力行使ができる』という状態になってしまうでしょう。立法は、適法なものと違法なものを区別するために行うものです。適切に意味内容を画定できない立法は、それ自体、違法と評価すべきです。そうすると、こうした政府の説明を前提にするなら、存立危機事態条項は、9条違反である以前に、曖昧で意味不明だから憲法違反だと評価されるべきです。」
更に、木村さんは、自衛隊明記改憲の方法として、安倍首相は、次のような改憲発議を行うと予想しています。
①任務の範囲は明記せず、あるいは曖昧にして、「自衛隊を組織してよい」という趣旨の規定だけ書いて発議する。
②これにより、個別的自衛権までの自衛隊を明記するなら賛成だけれど、集団的自衛権の行使容認までは賛成できない人の賛成をとりつける。
③可決後に、2015年安保法制を前提とした「自衛隊の現状」が国民投票で認められたと言い出す。
その上で、木村さんは、「任務を曖昧にした国民投票」作戦は卑怯と指摘し、次のように書いています。
「発議する側は、『この改憲をしても、自衛隊の在り方はこれまで通りです』と説明するでしょう。つまり、国民投票では、『改憲してもこれまで通り』と『改憲せずに現状維持』の二択を迫れることになります。何のために、多大なコストをかけて国民投票するのか、よく分かりません。これでは、国民の関心も高まらないでしょう。」
最後に、木村さんは、自衛隊をめぐる改憲発議をするならとして次のように書いています。
(第一投票 日本が武力攻撃を受けた場合に、防衛のための武力の行使を認めるかどうか)
(第二投票 日本と密接な関係にある他の国が武力攻撃を受けた場合に、一定の条件の下で武力行使を認めるかどうか)
木村さんは「正しい前提知識に基づかない議論は有害無益です。」と述べています。
私も、この本から「改憲」の論点を学んで、今後の活動に生かしたいと思いました。
これからも木村草太さんの論証を学んでいきたいと思いました。
木村ファンの皆さん、お勧めの書作をお教え下さい。
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