議員日誌

ふがいない僕は空を見た

 数日前から窪美澄著「ふがいない僕は空を見た」を読んでいます。

 冒頭は、少し過激な内容で、「この小説は!?」と思いました。

 しかし、ページをめくる程に、「この小説は、読み甲斐がある。」となり、一気に読み進めました。

 この小説は、連作の短編になっていますが、特に「セイタカアワダチソウの空」は胸が詰まりました。

 主人公である高校生の斎藤の友だちである福田が自分の日常を語る設定です。

 福田は、集合住宅に痴呆の祖母と生活しています。母は時々しか帰ってきません。父は亡くなりました。

 母は浪費家で、ある日、家のお金を全部持ち逃げしてしまいます。

 そんなある日、祖母が行方不明になります。

 更に、勉強を教えてくれていたアルバイト先の田岡もある事件で逮捕されます。

 不幸のどん底の様な福田が田岡を心配して「あの人が寒い思いをしていませんように。」と祈るシーンでこの章が締められています。

 斎藤の母は、助産院を経営しています。そこで繰り広げられる人間誕生のドラマの数々も心を打ちます。

 この小説は、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10 第1位」「2011年本屋大賞 第2位」に輝くと同時に、第24回山本周五郎賞に選ばれました。

 選考委員である重松清氏は「不思議な清涼感がある。この作品を読めたことがうれしかった」と評しています。

 格差と貧困が拡大していく現代をリアルに描写しながら、人間とは何か生きるとは何かを考えさせる、心に残る作品です。

 過激な描写が散りばめられていますので、苦手な方もおられるでしょうが、最後まで読むと嵌る作品です。

 窪美澄さんは、1965年生まれ。私と同世代です。小説家としては少し遅いデビューだとは思いますが、この作品が小説家として最初の作品集とは驚きです。

 デビュー作が山本周五郎賞受賞ですから、まさに大器晩成でしょうか。

 作家の将来は、デビュー作に凝縮されているといいますが、その意味で、彼女の次の作品が待ち遠しい私です。

 「ふがいない僕は空を見た」を読まれた皆さん、感想をお聞かせ下さい。

 小説は人生を豊かにしてくれますね。あなたの最近、嵌った小説をお教え下さい。

 

 

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  1. よかったっすよねえ。なかなか共感してくれる人がいないんですよ。妻(元ちゅうり)なんか「前半はポルノで後半は仕事思い出すからいや。基本機能不全家族やし」とか言うんですよ。
    基本今も昔もセツラーのまま生きているつもりなんですが、僕的には青年っていいな、と。特に終章の、どん底に傷ついていても「(助産院の)妊婦が不安になるから」自分が声をあげて泣く場所を選ぶ、自然に身についた配慮あるやさしさなんか、たまらなく良かったですよね。
     最近はSWの専門書もすっかり面白くなくなって、小説やら映画やらから学ぶことが多いような気がします。
     ブログ時々読んでます。体に気をつけてがんばって下さい。

    by 庄司 修 — 2011年6月17日 17:51 PM

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